ゲノム編集食品とは?遺伝子組み換えとの決定的な違いを分かりやすく解説!
ゲノム編集食品という言葉を耳にしたことはありますか?ゲノム編集食品は、食品業界に革命を起こす技術として複数メディアに度々取り上げられています。
ゲノム編集食品とはどのような技術を用いたものであるのか、また遺伝子組み換え食品との違いが気になりますよね。
そこで今回は、ゲノム編集食品とは何か、遺伝子組み換え食品との決定的な違いや利用例を解説します。
- ゲノム編集食品とは何か簡潔に知りたい方
- ゲノム編集食品と遺伝子組み換え食品との違いを知りたい方
ゲノム編集食品とは?
ゲノム編集食品とは何でしょうか。
ゲノム編集食品とは、生物の遺伝情報が保存されている一部を壊して特定の性質を持つように操作された食品です。
ゲノムとは、ある生物のすべての遺伝情報が保存されている設計図のセットとされています。
設計図のセットとなるゲノムは、全ての情報の元であるDNAの全体を表し、そのDNAを壊す(編集する)ことで、特定の性質を持った食品を作り出しています。
例えば、マダイには体を大きくするDNAがある一方で、大きくなりすぎないようにするDNAもあります。
体を大きくしすぎないようにするDNAを受精卵の段階で壊すことで通常の約1.6倍も大きく育つマダイを作ることができます。
ゲノム編集技術は、2020年にノーベル賞を受賞したCRISPR-Cas9(クリスパーキャス9)をはじめとする最新技術が利用されています。
クリスパーキャス9は、カットしたい目的のDNAまで連れていくガイド役の「ガイドRNA」と、実際にDNAをカットする役の「キャス9(酵素)」のセットとして働いています。このガイド役とカット役をセットにした「クリスパーキャス9」技術の開発によって、いままで数年かけて行われていたゲノム編集を大幅に短縮することに成功し、食品だけでなく医療の分野でも応用され始めています。
最先端のバイオ技術を利用して作られた食品ですが、遺伝子組み換え食品との違いは何でしょうか。
ゲノム編集食品と遺伝子組み換え食品の決定的な違い
ゲノム編集食品と遺伝子組み換え食品の決定的な違いは、もともとその食品が持つ遺伝子を利用するのか、その食品にない遺伝子を組み込むのかの違いです。
また、国による安全性調査が必要とされているか、表示義務の有無も異なります。
ゲノム編集食品 | 遺伝子組み換え食品 | |
---|---|---|
方法 | その生物が持つ遺伝情報をカット・編集 | 外(その生物にない)から遺伝情報を組み込む |
国による安全性調査 | なし | あり |
表示義務 | なし | あり(一部を除く) |
開発コスト | 低い | 高い |
ゲノム編集食品は、もともと食品が持っている遺伝子をカット・編集します。
もともと食品が持っている遺伝情報を編集するだけなので、安全性審査は必要ないとされています。
一方、遺伝子組み換え食品は、もともとその食品が持っていない、新たに外から遺伝子を入れる技術のため、人間に害を及ぼすことがないか国の安全性審査を受けることが義務づけられています。
遺伝子組み換え食品は、企業が成分解析や動物実験などを行い、アレルギーの原因物質や発がん性物質などが新たに生み出されていないことを確認します。
そして企業が行った解析結果や実験結果などのデータを国の食品安全委員会に提出します。
その後、厳格な審査を受け許可を得たものが遺伝子組み換え食品として使用が認められています。
ゲノム編集食品のデメリットについては、こちらの(内部リンク予定:ゲノム編集食品が食卓に?3つのデメリットと危険性を管理栄養士が解説!)記事で詳しく解説しています。
ゲノム編集食品の利用例
ゲノム編集食品は世界中で研究が進み、日本では通販を中心に流通しています。
現在日本でゲノム編集食品の流通が始まっているのはトマトとマダイ、トラフグの3つです。
ゲノム編集トマトは2021年9月にインターネット上で販売を開始しました。
続いてマダイとトラフグも、厚生労働省に届け出が受理されたと同時にクラウドファンディングで予約販売をしています。
さらにゲノム編集トマトとマダイ、トラフグ以外にも2種類目となるゲノム編集トマトとトウモロコシは国への届け出が完了しています。
ゲノム編集食品の安全性に疑問を持つ消費者団体の「日本消費者連盟」は、2021年6月にトマト加工品メーカー各社に「ゲノム編集トマトを使用するかどうか」の質問を実施しました。
11社にアンケートを実施し、「ゲノム編集トマトを使用しない」と回答したのは5社です。その他メーカーについては回答しない、もしくは未定であると回答しています。
また、日本消費者連盟が2022年1月に寿司チェーン各社に「ゲノム編集魚類を使用するかどうか」の質問も実施しました。
18社にアンケートを実施し、「ゲノム編集魚類は使用しない」と回答したのは3社です。その他のチェーン店については回答しない、もしくは未定であると回答しています。
日本消費者連盟が行ったアンケート調査では、ゲノム編集トマトとマダイを使用していると明らかにしているメーカーはありませんでした。
しかし、アンケート調査に対し未回答や未定であるケースがあり、今後製造メーカーや外食チェーンでゲノム編集食品を使用する可能性は否定できません。
また、実用化へ向けて開発中のゲノム編集食品は毒性の少ないゲノム編集ジャガイモやアレルギー物質の少ないタマゴ、収穫量を高めるイネなど様々な食品のゲノム編集開発が進んでいます。
いずれも国の審査と商品パッケージ等に表示義務はないため、いつ認可され市場へ流通するか分かりません。
私たち消費者は、どのような食品がゲノム編集食品として認可されているか、食への関心を常に持っておく必要がありますね。
まとめ
ゲノム編集食品とは何か、遺伝子組み換え食品との決定的な違いと利用例を解説しました。
ゲノム編集食品とは、特定の遺伝子の働きを壊してある特徴を持つ食品を作り出す技術を利用した食品です。
他の食品や生物の遺伝情報を組み込む遺伝子組み換え作物とは異なり、その食品がもともと持っている遺伝子情報をカット、編集することで特定の特徴を持つ食品を作れることが大きな特徴といえます。
ゲノム編集食品の市場規模は今後、拡大していくことに間違いありません。
国への届け出や表示義務がないからこそ、どのような食品がゲノム編集食品として利用されているのか常に目を向ける必要があります。
ゲノム編集食品のデメリットと危険性を知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
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