遺伝子組み換え食品とは?メリット・デメリットをわかりやすく徹底解説!

この記事では、遺伝子組み換え食品についてメリット・デメリットをわかりやすく解説していきます。

遺伝子組み換え技術について詳しく理解出来ていない方や、気づいていないところで遺伝子組み換え食品を、口にしている方も多いのではないでしょうか?
そこで、今回は遺伝子組み換え技術・食品に加えてメリット・デメリット、最近話題のゲノム編集と遺伝子組み換えの違いについてもまとめてみました。
遺伝子組み換え技術とは?
遺伝子組み換えという言葉を聞いたり見たりする機会があると思います。
遺伝子組み換え技術は難しく理解しづらいですよね。ここでは遺伝子組み換え技術について分かりやすく解説していきます。
遺伝子組み換え技術とは
遺伝子組み換え技術とは、ある生物が持つ性質の遺伝子(遺伝形質を決定する因子)だけを細胞から取り出し、その性質が必要な別の細胞にその遺伝子を組み込みその性質を持たせる技術のことです。
例えば、とうもろこしはガなどの特定の害虫に被害を受けます。ガなどに対して殺虫効果を持つ別の生物の遺伝子を、とうもろこしに組み込むことで、殺虫剤を使用しなくてもとうもろこしの栽培が可能になります。
このように、除草剤や害虫に強い作物がこの遺伝子組み換え技術によって生み出され、海外では1996年から実用化されています。
日本でも、異なる品種をかけ合わせる交配や突然変異による品種改良で遺伝子の組み換えは起きていましたが、遺伝子組み換え技術では、狙った特定の性質をもつ作物を作り出すことが可能になりました。
遺伝子組み換え食品とは?
遺伝子組み換えが認められている食品には、どんな物があるかご存じでしょうか?
ここでは、現在日本で認められている遺伝子組み換え食品について紹介していきます。
2022年6月時点で、現在で安全性審査を受け認められた遺伝子組み換え食品は、9作物(327品種)あります。
じゃがいも | 12品種 | 害虫に強いウイルス病に強い |
大豆 | 28品種 | 特定の除草剤で枯れない特定の成分(オレイン酸など)を多く含む |
てん菜 | 3品種 | 特定の除草剤で枯れない |
とうもろこし | 207品種 | 害虫に強い特定の除草剤で枯れない |
なたね | 22品種 | 特定の除草剤で枯れない |
わた | 48品種 | 害虫に強い特定の除草剤で枯れない |
アルファルファ | 5品種 | 特定の除草剤で枯れない |
パパイヤ | 1品種 | ウイルス病に強い |
からしな | 1品種 | 特定の除草剤で枯れない など |
日本国内では、大豆、わた、とうもろこしの3品目を飼料用途、食用油・甘味料などの原材料として大量に輸入していますが、国内での商業栽培は行われていません。(令和2年度に、バラの1品種のみ商業栽培の実績報告あり)
遺伝子組み換え添加物とは?
食品だけでなく添加物にも遺伝子組み換えが認められているものがあることをご存じでしょうか?
ここでは、現在日本で認められている遺伝子組み換え食品添加物について紹介していきます。
2021年10月時点で、日本で安全性審査を受け認められた遺伝子組み換え添加物は、22種類(59品目)あります。
α-アミラーゼ | 11品目 | 生産性・耐熱性向上など |
キモシン | 4品目 | 同上 |
プルラナーゼ | 4品目 | 同上 |
リパーゼ | 3品目 | 同上 |
リボフラビン | 2品目 | 同上 |
グルコアミラーゼ | 4品目 | 同上 |
α-グルコシルトランスフェラーゼ | 3品目 | 同上 |
シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ | 1品目 | 同上 |
アスパラギナーゼ | 1品目 | 同上 |
ホスホリパーゼ | 6品目 | 同上 |
β-アミラーゼ | 1品目 | 同上 |
エキソマルトテトラオヒドロラーゼ | 2品目 | 同上 |
酸性ホスファターゼ | 1品目 | 同上 |
グルコースオキシダーゼ | 2品目 | 同上 |
プロテアーゼ | 2品目 | 同上 |
ヘミセルラーゼ | 2品目 | 同上 |
キシラナーゼ | 5品目 | 同上 |
β-ガラクトシダーゼ | 1品目 | 同上 |
プシコースエピメラーゼ | 1品目 | 同上 |
テルペン系炭化水素類 | 1品目 | 同上 |
α-グルコシダーゼ | 1品目 | 同上 |
ペクチナーゼ | 1品目 | 同上 |
食品添加物をつくるのに微生物が用いられることがあります。
従来の微生物に新たな性質を持った遺伝子を組み込んで遺伝子組み換え微生物をつくり、この遺伝子組み換え微生物で製造したものが遺伝子組み換え添加物です。
遺伝子組み換え作物の現状
遺伝子組み換え作物は、2019年時点で29ヵ国で栽培されています。
ここでは、世界各国における遺伝子組み換え作物の状況について詳しく解説していきます。
世界の遺伝子組み換え作物の栽培面積は、日本の農地面積の約43倍の約1億9千万haと、とても広大な面積です。
世界最大の栽培面積を誇る、アメリカ合衆国では7,150万haで、栽培面積第2位のブラジルに約2,000万haもの大差をつけています。
世界の遺伝子組み換え作物栽培農地における主要な遺伝子組み換え作物は4種類です。
- 大豆48%
- とうもろこし32%
- わた14%
- なたね5%
世界で栽培されている遺伝子組み換え作物品種の割合は、大豆が約7割、わたが約8割、とうもろこしが約3割です。特に主要な栽培国では、約90%ととても高い割合で遺伝子組み換え作物が導入されています。
発展途上国(インド、パキスタン、ブラジル、ボリビア、スーダン、メキシコ、コロンビア、ベトナム、 ホンジュラス、バングラデシュなど)では、遺伝子組み換え作物の栽培面積が増加しています。
19ヵ国の発展途上国が占める、世界の遺伝子組み換え作物栽培面積の53%になります。(平成30年6月時点)
遺伝子組み換え作物が商業的に栽培され始めた当初、栽培面積の大部分を先進国が占めていましたが、現在では発展途上国における遺伝子組み換え作物の栽培面積が先進国を上回っています。
遺伝子組み換えのメリットは?
みなさんは、遺伝子組み換え作物をつくるメリットをご存じでしょうか?
ここでは、遺伝子組み換え作物によるメリットを4つ紹介します。
1.農作業の負担・生産コストの削減
遺伝子組み換え食品の大豆やとうもろこしに、害虫に強い・特定の除草剤で枯れないといった性質をもたせたことにより、農薬を使用する量が少なくなり除草作業も効率的に行えるようになり農作業の負担・生産コストの削減につながります。
2.安定した食糧供給
現在、飢餓人口の増加の深刻化、世界人口の増加に伴い食糧の更なる増産が求められています。そこで、食糧問題の解決に向け世界各国で、干ばつ耐性作物・冠水耐性作物・窒素利用効率の高い品種などの開発が進められています。
遺伝子組み換え作物で、干ばつ・豪雨・異常気温といった気候変動や作物が育ちにくい土地でも栽培できるような性質を組み込むことで過酷な状況下での安定した収量を目指しています。
3.栄養素の機能性の向上
遺伝子組み換え作物には、作物の生産性を向上させたり栄養価や機能性高い作物をつくりだすことが可能です。
- ベータカロテンをつくりだす『ゴールデンライス』
- 収穫後の日持ちがよい『フレーバーセーバートマト』
- オレイン酸の含有量の多い『高オレイン酸大豆』 など
4.環境保護・フードロス削減
遺伝子組み換え作物は、畑を耕さずに栽培できる作物を「不耕作」が可能になりトラクターを使用する回数が減少し燃料の節約につながることで、二酸化炭素の排出量が削減されています。
アメリカで承認されている遺伝子組み換えリンゴやじゃがいもは、キズなどによる変色を防ぐ性質を組み込んでいます。
変色を防ぐ性質を組み込むことで、見栄えの悪さを理由として廃棄される量が減り、廃棄処分の際に埋め立て地から発生するメタンガスの量を削減することができます。
このように、遺伝子組み換え作物は品質の良い作物を多く収穫できるため、収量ロスを最小限に抑えることができます。今までよりも少ない農地で多くの作物を栽培することが可能となり、森林や草原などの土地を農地に変えずに生産量を増やすことにもつながります。
遺伝子組み換えのデメリットは?
遺伝子組み換えについては、賛否両論あり多くの議論がなされています。ここでは、デメリットとして懸念されている2つの問題について解説していきます。
1.生態系にあたえる影響
遺伝子組み換え作物の性質が、花粉により雑草などと交配し組み込まれてしまうという問題があります。
農林水産省では雑草などとの交雑の可能性は低いと発表していますが、実験方法について問題があると指摘する研究者もいます。
また、自分の農地で遺伝子組み換え作物を栽培していない場合でも、近隣で栽培された遺伝子組み換え作物の花粉が、風で飛散し受粉してしまうことで、意図せずに遺伝子組み換え作物となってしまうことも考えられますし、害虫抵抗性のある遺伝子組み換え作物を栽培し続ければ、抵抗力の強い害虫が出てくることや意図しない虫へ危害がおよぶ可能性も否めません。
2.人体にあたえる影響
遺伝子組み換え作物によって、アレルギーを引き起こす心配や害虫が死んでしまうような農作物を人間が食べても大丈夫なのかなど、遺伝子組み換え作物による人体への影響の問題があります。
厚生労働省では、厳しい安全性審査を行っており、検査の結果に問題があった場合には、市場に流通する前に速やかに回収・廃棄などの措置を取るとしています。
商品として発売するまでに長い年月をかけて研究しているので、人体に影響を与える可能性は極めて低いとしていますが、安全性審査を経た遺伝子組み換え作物の中には、慢性毒性などに関する試験の実施が必要がないと判断されているものもあり、一部の消費者団体から批判を受けています。
遺伝子組み換えとゲノム編集の違いは?
ゲノム編集という言葉を聞いたことはありますか?
最近よく耳にするようになり、遺伝子組み換えとの違いが気になる方も多いと思います。
遺伝子組み換えとゲノム編集の違いについてですが、遺伝子組み換えとは、もともと持っていない新しい性質を組み込む技術であり、ゲノム編集とは、もともと持っている性質を変更する技術のことです。
ゲノム編集では、DNAを切ることができる人工酵素を利用して「狙った遺伝子を突然変異させる」ことが可能になりました。
遺伝子組み換えとゲノム編集は似ているようですが、持っていない特性を組み込む遺伝子組み換え技術と持っている特性を変更するゲノム編集では大きな違いがあります。
メリット・デメリットを考えて選択していきましょう
遺伝子組み換え食品のメリット・デメリットについて解説しました。
今後も、新たな品種が開発されることが予想されますが、口に入るものだからこそ安全性の確認が重要になりますよね。
遺伝子組み換え食品には、メリットもありますが、人体への影響を心配する声も多くあるため、自分でメリット・デメリットについて考え、しっかりと選択していけるようにしていきましょう。
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